2022年2月27日日曜日

2022.2.25-26 仙丈ヶ岳地蔵尾根(厳冬期)

 日程:令和4年2月24日〜25日

天候:晴天(1日目)、晴天(2日目)

メンバー:野戸CL、伊藤

ルート概要:

【1日目】

4:30 起床

5:20 柏木登山口駐車場

7:00 1923m

9:45 松峰小屋(2080m付近)

12:05 2410m

13:40 2650m付近

16:45 仙丈ヶ岳避難小屋

【2日目】

3:40 起床

6:00 小屋発

6:25 仙丈ヶ岳山頂

7:30 2650m

10:00 2030m

11:50 1730m

13:15 柏木登山口駐車場


【概要】

 まだ冬山を楽しみたい。だが降雪が激しい北アルプスは危険。ならばそれほど降雪していない南アルプスだ。2年前の候補でもあった仙丈ヶ岳地蔵尾根で体力登山を楽しもうということになった。長野、新潟の降雪状況からして南アルプスもある程度の降雪はしているだろうと予想しており、ラッセル地獄も覚悟していたが、予想に反しトレースがバッチリ残っていた。1日目序盤に良いペースで高度を稼いだが、終盤でペースダウン。久々に「喰らった感」のある予想通りの体力登山となったが、なんとか登頂することができた、本当に出し切った感すらある。そして今回はマンボウ期間ということもあり、感染防止を徹底した山行を実施し新登山様式を確立できたという副産物まであり、充実した山行となった。



 前回の爺ヶ岳真南尾根敗退から約一ヶ月が経ち、新たな山行計画を練るも北アルプスの降雪が激しすぎる。南アルプスの甲斐駒ケ岳日向八丁尾根→黒戸尾根コースも候補に挙がったが、1泊2日では厳しすぎる。できたとしても2日目はヘッテン下山になってしまうので安全面から却下だし、2泊3日の計画では街の核心部を超えられるわけないだろバカヤロー!1泊2日だって、「それ前泊してるから事実上2泊3日やん。」という厳しい事実を突きつけられて大変なんだから。積み上げてきお父さんの信頼を崩すわけにはいかんのだ。というわけで、メンバーの体力に鑑み仙丈ケ岳地蔵尾根を楽しむことにした。


 2月24日夜。まっちゃんは街の核心部を超えられなかった…。のとっちも「今回は本当に厳しかったです…次は無理かもしれない…。」渋い顔をして登場した。よし、じゃあ次からは当日の午前1時とかに出発して1泊カサ増しカウントされないようにしよう。新しい登山のあり方を考える時がきた。


 マンボウ中なので感染拡大防止を徹底し、体調を万全にして事前に体温を測り(36.2℃)、余計なお店には寄らずに車で柏木登山口駐車場にたどり着いた。駐車場手前の傾斜のある道路は凍りついており、スタッドレスタイヤ装着のハスラー四駆で向かったが、多少横滑りの走行してしまったためのとっちを凍りつかせた。この駐車場は登山を愛する方が無料で開放してくれている、本当に感謝しかない。

 外気温はマイナス12℃のため、凍りつく可能性があるためサイドブレーキは引かずにシフトギアを1速に入れ、車輪止めで駐車した。1:30着。車中泊し、4:30起床。諸々準備を行い5:20暗闇の中、ヘッテンを点けて登山開始。登山届は長野県に電子申請済みである。


 登山口を過ぎ樹林帯を進む。なんとトレースが存在していた。先行者には感謝しかない。気温も低く雪も締まっているため、多少の傾斜はあるもののワカンを装着せずにグイグイ進む。無風のため寒さはそれほど感じない。時刻は7:00、高度計は1900mを指していた。嘘でしょ?1時間40分で高度を700mも稼いだの?感覚的には1500m付近だと思うんだけど…。爺ヶ岳新南尾根のラッセル地獄で鍛えられたのかもしれない。ただ、行程は長いのでバテないように休み休み、行動食を補給しながら樹林帯を進んでいく。



地図と高度計で現在地を確認し、記録を残すのとっち


休憩中はマスク装着だコノヤロー!

樹林帯

稀に現れる中央アルプスが癒しだ


バッチリトレース

 ここまでの樹林帯は特筆することもなく。比較的新しめの道標が多数設置されていたり、赤布が潤沢に設置されていたり、何回か林道を通ったりで歩きやすい。登山者のために整備してくれているのがよく分かる。

 その後、松峰(2080m)を南側から巻き、松峰小屋の看板を横切る。松峰小屋へ行くには本線を南側に分岐しなければならないが、小屋までのトレースは無かったし、分岐を100mも進まなければならないので体力温存のためそちらへは寄らなかった。

 この松峰小屋の看板を超え地蔵岳に向かうあたりから急登になり始める。地蔵岳を北側から巻き、ここから登り返しを繰り返すようになる。途中ソロの登山者とすれ違う。「一泊ですか?」と聞くと「そうです。」とだけ返答された。ふむ。

 10:45地図上トラバース気味に進むあたりからスピードが鈍化する。行動食はこまめに摂っているのでシャリバテではなさそうだ。急登登り返しを繰り返して足に効いたのか、それとも高度が上がって心拍数が上がっているのか、自分達でもイマイチ原因がわからないがスピードが上がらない。

結構急登です


先行するのとっち


 時刻は14:00手前、2650m付近でトラバース気味に横切る箇所があり、その傾斜から若干雪崩が怖い。ここでアイゼンを装着して素早く横ぎりすぐにルートを直登する。もはやスピードがでる状況ではないが頑張って直登すると森林限界を超え稜線に出た。一気に視界が開け気分が上がる。


森林限界を超えた


視界は開ける、ただし畳み掛けるように急登

快晴!


 待ってましたと言わんばかりの景色。でもこの時点で結構疲れている。ここからの稜線が一番の急登なのだ。


きついあまりにクネクネとオネエ化する伊藤


頂上が見える。左側は分厚い雪庇があるので踏み抜き注意だ


渾身の力を発揮するのとっち。伊藤は追いつけない。

 完全にバテている。少し歩く度に負荷の強いインターバルトレーニングをしているかのように心拍数が上がる。50歩歩いて一休み、30歩歩いて一休み。最終的には20歩歩いて一休みを続けて地道に高度を上げた。頂上に向かって左手に下降に仙丈ケ岳避難小屋が見えた。一休みして避難小屋へ降りることにした。この時、強い風が吹き始めており体温を急激に奪われてしまった。

結構急勾配を降りなきゃいけないのね…

 16:00仙丈ケ岳避難小屋到着。行動時間は約11時間だった。ありがたいことに冬季は2階を避難小屋として開放してくれている。本当に感謝である。あいにくトイレは雪が吹き溜まっており使用できる状況では無かったので、キジ打ちしたくならないように祈るしか無かった。流石に小屋周辺でキジ打つ訳にはいかない。

 アイゼンを脱いで2階へ上がる。寒い、超寒い。小屋内とはいえ真冬の高度2900mでは当然である。先ほどの稜線上の一休みで風に晒され手足の指先を冷やしてしまった。靴が凍っているためなかなか脱げない。諸々の準備が鈍化していしまった。なんとか靴を脱いで小屋内にテントを立てようとするが作業が捗らない。この時の反省だが、濡れた靴下をすぐに脱いで指を拭いて予備の靴下に履きかえるべきであった。濡れた靴下のままでゾウ足を履いたため、なかなか暖まらなかった。こんな基本のきも出来ていないなんて山岳部員として恥ずかしい。末端が冷えていると体全体が冷えているような気がする。すぐにマットを展開して、マットの上で作業をしたのは正解であった。小屋内にテントを立てて、「テントin小屋」という写真を撮るつもりだったのに余裕がないのでテント内に飛び込む。

 調理用の水確保のための雪集めやら晩御飯の準備やらの全てをのとっちに任せ(すみません)お休みタイムである。野菜にお肉に鯖缶入りで栄養満点な上、トマトペーストが絶妙に合う超ポトフである。うまし。

野戸シェフによる超ポトフからの追いペンネ!染みるぜぇ

感染拡大防止のための体温測定!(ここで高熱だったらどうするんだって話もある)

テント内は当然マスク着用だバッキャロー!(見えない)

 19:00就寝、3:40起床。ぐっすり眠れた。疲労も回復していたし、足先の冷えも完全に回復していた。当初は日の出に合わせて登頂するという案もあったが、昨日の寒さに鑑み少し明るくなってから登ることにした。なので、ゆっくり食事を摂り、ゆっくり撤収作業を行なった。小屋内を完全撤収し、6:00アイゼンを装着し出発。分岐点でデポし、冷えないよう厚着装備にして山頂を目出す。昨日と同様、急登ではあるものの体力は回復しており荷物もないので軽快に進むことができた。6:25山頂。

美しい朝日


南アルプスの女王

富士山と北岳


南アルプス南部方面。塩見岳など

八ヶ岳連峰、甲斐駒ケ岳

岳ごっこ

神々しいリーダー

 快晴。本当に美しい景色だった。目の前に広がるは北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳連峰、富士山。贅沢な時間だった。敗退続きの伊藤は2年3ヶ月ぶりの山頂だったので感激もひとしおである。

 お父さんは早めに帰る使命があるので、ぼちぼちなところで下山開始。途中デポした荷物をピックアップし軽快に下る。下山は早い。登りで3時間かけた箇所を1時間15分で下ってしまう。途中で4人の単独登山者とすれ違ったが、そのうち3名は日帰りで山頂を目指すと言う。ふむ。

 帰りは昨日と違い気温が高かったため、雪が腐り気味で踏み抜きが多かった。柏木登山道入口には13:15に到着した。下山は6時間、登りは11時間。無事に帰還である。

高度を下げるに連れて雪が腐っていました



【総評】

 一言で体力登山です。しっかりと体力作りをして、天候、装備さえ間違えず、12本アイゼンの使用方法を習得していれば難しいルートではありません。体力に自信がなければ2泊3日で登っても良いでしょう。長い行動時間の先に素晴らしい景色が待っています。

 ただし、ラッセルが発生する場合。さらなる体力が要求されることと、ルートファインディングも必要になります。赤布が潤沢に設置されてはいるものの、難易度は格段に上がるでしょう。

 今回はコロナ禍に置ける登山にも注視できたと思います。テント泊は共同生活になるので注意しなければなりませんが、消毒や感染防止をしっかり行えば近所のスーパーに行くより安全かと思います。人とほとんど会いませんので。

【N追記】

 先月の爺ケ岳(真の)南尾根に続き、2カ月連続での山である。本当は毎月このペースで登りたいが、そうもいかず・・・。

 今年は降雪多く、めったにないチャンスなのでもう一度北アでラッセル三昧も考えたが、日程の短さと何よりダレの危険度から南アルプスとした。仙丈ケ岳は登ったことがなかったため、初登頂となった。地蔵尾根は赤布が随所にありラッセルもおそらく正月以降バッチリで想定よりも人が入っていた。しかし、地形を無視して道がつけられており、視界がないとルートファインディングはとても難しいと感じた。そして、長い。素晴らしい体力登山ルートだった。

 なお、頂上小屋は本当に寒いので注意を。