メンバー:上野(か)、ほか1名
山岳部のマッターホルン&モンブラン隊から一週間遅れの日程で行ってきました。
私は海外の山は四度目ですが、ヨーロッパ・アルプスは初めて。相方はヨーロッパ・アルプスだけでも今回が八回目です。
本来なら慣れた相方に全てお任せでも良かったのですが、準備は嫌いではないので飛行機、宿などは私が手配しました。
一応、目標はモンブランですが、憧れの本場アルプスであり他にも魅力的なルートがたくさんあるので、特にこだわるつもりはありません。
飛行機は悪評高い(?)アエロ・フロートの次に安いターキッシュ(トルコ航空)を使いました。往復13万円台、ご参考まで。
7/31(金)
職場を午後半休し、夜の便で成田発。イスタンブール経由でジュネーブへ。
8/1(土)雨
昼前にシャモニー着。
スーパーでの買い物ほか、ほとんどクレジットカードが使えるが、ALPYバスと山岳保険だけはキャッシュ払い。
現地通貨を一切持たず、さらにカードの海外キャッシング手続きを忘れた私は危うく路頭に迷うところでした。(汗)
この日のうちにマルチパス、山岳保険、トポの購入など済ませ準備完了。
8/2(日)晴れ
エギーユ・ルージュのマルチピッチ・クライミング
手始めにグリエール下部バットレスの「モダーン・タイム」というルートを登る。
全6ピッチ、グレードはアルパインの4~5級-ぐらい。
こちらの岩は硬くフリクションはバッチリ。
快晴の空の下、モンブランやジョラス、ドリュなどを眺めながら快適なクライミングを楽しむ。
終了点ではノルウェーの女性パーティーと国際親善を図る。この時、初めてモンブランのグーテ側が落石事故で閉鎖中と聞きました。
8/3(月)晴れ
プチ・ヴェルト敗退
本日は高度順化と雪のコンディションを見るため、プチ・ヴェルト(3,512m)へ。
朝から素晴らしい天気で、山岳部本隊は今頃モンブランに登っているんだろうなと想像する。
今日の我々は行程も短く、アルパイン・ミックスのルートでは下から二番目に易しいPDというグレード。まぁ楽勝だと思っていたのだが。
シャモニーからアルジェンチェール、そこからロープウェイを乗り継ぎ、グラン・モンテへ。既に標高は3,200m。
目の前にはスキーのゲレンデをちょっと急にしたような斜面が広がり、ほんの一登りで片付きそうな気がする。
ロープを結んでスタート。
クレバスを越えながら直登、さらにトラバースしながら高度を上げていくと、なぜか先行パーティーが次々と引き返してくる。
見ると、その上は大きなクレバス、さらに60~70度ほどの氷の壁となっていて、ガイド・パーティーの一組だけがWアックスで越えていったが、けっこうリスキー。
まぁ本番前にそこまでしなくていいかと、我々も他パーティーに倣って途中でリタイア。
明日の天気はイマイチなので午前中にまたエギーユ・ルージュのマルチとし、天気の良さそうな5日をモンブランのアタックとする。
エギーユ・ルージュのマルチピッチ・クライミング(その2)
今日はブレバンの「ズモヌ」というルートを登る。全7ピッチ。グレードは4~5級+ぐらい。
けっこう人気のルートで、山岳警備隊の訓練チームやパリの熟年夫婦、イギリスからの女子組などで賑わった。
こちらも岩は硬く、ちょっと小難しいピッチもあってなかなか楽しめる。
終了点に着いた途端、雨がポツポツ。ナイス・タイミングだった。
町に降りて、登山博物館を見学。
ホテル裏の「山の家」(ガイド協会)で聞いてみると、モンブランのグーテ側は相変わらず閉鎖中、ミディ側は天気が良過ぎて小雪崩が頻繁に起き、表面に氷が出てきてしまっているとのこと。
ガイドレスで行けるか行けないかは自分たちの実力次第。
また、当初朝一のロープウェイでミディ山頂に上がり、そこからモンブランを目指す予定だったが、調べてみると登りだけで6~9時間、帰りも含めるととても日帰りできないことがわかった。
今さらながら自分たちの甘さに気付き、明日はミディからエギーユ・ド・プランへの縦走に変更する。
こちらのルートについてもガイドにはっきりと「Bad condition.」と言われたが、はたして・・・。
ミディ-プランの縦走
朝一のロープウェイでミディ山頂駅へ。
最初のミディからの下りも初めてだと、ちょっと怖い気がした。
長谷川さんも廣井さんももう何度も歩いているはず。やるなぁと感心した。
少し下ったところで右手へ伸びるモンブランへのトレースと分かれ、左側のプラン方面へ。
緩やかなスロープから、さらに急な下り。アイゼンも刺さらないほど堅いブラック・アイスが出てきて、恐る恐るバックステップで下る。
そんな我々の気も知らずに現地ガイドは前向きのままガツガツ下る。さすが。ていうか、自分のヘボさ加減が嫌になる。
下り切った所から今度はリッジの左裾をトラバース気味に上がっていく。例年あるはずの雪が消えて不安定な岩の迷路となっており、明らかに悪い。
さらに、氷の斜面をアイス・スクリューでランナーを取りながら突破。2パーティーはここで引き返して行った。
やがて懸垂ポイントに出る。日帰りとして考えるなら、ここがターニング・ポイントとなる。
だが、相方は「行こう!」と強気の姿勢。
一昨日のプチ・ヴェルトがまさかの敗退、さらにこの後モンブランも行けるかどうか微妙な情況を考えると、確かにここで少し頑張らないと成果無しで終わってしまうかもしれない。
覚悟を決め懸垂下降で下りるが、壁は絶望的に立っており、これで退路は断たれた気がした。
そこから登り返して岩の水平リッジをしばらく進み、さらに再び懸垂3ピッチでイタリア側の氷河上に降り立つ。
そのまま雪稜を進み、ようやくプラン頂上の肩に出る。
ここからさらに岩のピッチが3ピッチほど。まだあるのか。もう帰りのことは考えず、とにかく目の前の岩だけに集中しガムシャラに登る。
背後のモンブランが大きい。
既に14時を回っている。そそくさと記念写真を撮った後、懸垂下降で降りる。
今から往路を戻ってもロープウェイの最終便には絶対に間に合わないため、下山はメール・ド・グラス経由モンタンベールとする。
急な斜面をイタリア側へ下降。大きなクレバスを迂回しながら進むが、下に行くにつれ氷河はズタズタになってくる。
迷路のようなクレバス帯を進むが、ついに手詰まり。これ以上はあまりにも危険なので、しかたなく引き返す。
稜線直下まで登り返し、岩棚でビバーク。
正面には夕焼けに色づくジョラスが幻想的で、何だか夢でも見ているようだったが、夜になって冷え込んでくると現実に引き戻され、二人背中合わせにくっついて寝る。
8/6(木)晴れ
プラン-ミディへの復路
ツェルト、ストーブも持たない着の身着のままのビバークだったが、何とか無事に朝を迎える。
今日はミディへ帰るだけだ。
このルートは往きに懸垂で降りた箇所を登り返さないといけないため、復路の方がグレードが上がる。
まずは4b(4級+)のコーナー・クラックを3ピッチほど。
日本のように残置ハーケンはないのでランナーは全てカムで取るが、こちらのクラックはしっかりしていて面白いようにガッチリ決まる。
さらに岩、ガレ、雪、氷・・・といろいろな斜面を、昨日を思い出しながら進んでいくが、やはり何度かルートを見失う。
それでも昨日最初に懸垂して退路を断たれたと思った壁は巻いていくことが可能とわかり、ここでようやく安全圏に入ったことを確信する。
ヘロヘロになりながらミディ到着。
結局、現地のガイド付きパーティーなら片道約4時間のコースを、我々は片道7時間の二日間行程にしてしまった。参りました。
8/7(金)晴れ
休養
さすがに昨日の疲れもあって、本日は完全休養。
ボリュームたっぷりのハンバーガーとビールのブランチを済ませてから洗濯など。
8/8(土)晴れ
ギャリオンの岩場
本日は午後から雨の予報だったので、近場の岩場へ。
日本では「ガイヤン」と表記されることが多いが「ギャリオン」の方が正しく、その方が現地の人にも通じる。
明るく開けた岩場で、老若男女の人々で賑わっている。ただ南向きのため、昼には猛烈に暑くなる。朝夕がおすすめ。
ハングした厳しいルートは無く、ほとんど4~5cの手軽なグレード。私は5c(5級+)を3本、6a(5.10a)を1本登る。
膝の痛みと痺れは時々出るが、なぜかクライミングの時は平気だ。不思議である。
午後は後半戦の準備と手配。
好天続きだがモンブランはいろいろな点で状況が悪く、今回は諦め、後半はツール・ロンドとロシュフォールを目標とする。
8/9(日)雨
休養
一週間ぶりの雨。日本のような不快感は無いが、連日の暑さでクラクラするのでまさに恵みの雨といった感じ。
午前中、登山用品店を物色。本場モンブランとドリュという名のケーキを食べる。
夜は中華レストランで久々のラーメン。だが旨くない。こちらはスーパーでもカップ麺は見当たらず、そろそろ日本食が恋しくなってきた。
上野(か)・記
目に浮かぶナイスクライミング!ですね(^^)写真も雄大でスケールが大きいでね! 坂本
返信削除遅ればせながらUPさせていただきました。
返信削除8/1はほんとシャモニーの町でニアミスでした。会えずに残念!