2015年8月31日月曜日

シャモニー個人山行(後編)

メンバー:上野(か)、ほか1名

8/10(月)
エギーユ・ルージュのハイキングほか
 天気が安定する明日からの二日間を後半戦のメインとし、本日は相方と別行動でハイキングへ。
 軽くマルチピッチでも行きたかったが、前半戦で相方は爪先を痛めてしまい、私もヒザが悪いのでこれもヨシとしよう。


 ラック・ブラン(白い湖)からランデックス、コルニュ峠経由でプランプラへ。
 ラック・ブランは日本人ハイカーにも人気で、モンブランを始めシャモニーの山々を一望にできる素晴らしい場所。
 途中、墓標らしきものがあったが、こんな場所なら人生最後の地にしてもいいなと思った。

 エギーユ・ルージュのメイン・トレイルを歩き通してシャモニへ下山。

 時間がまだ少しあるので、そのまま登山電車に乗ってモンタンベールへ。
 終点駅からメール・ド・グラスの氷床までは地球温暖化の影響で年々高低差が開くばかり。
 あと30年もしたら、ここシャモニーの山々も日本の北アルプス程度の環境になってしまうかもしれない。




8/11(火)晴れ
ツール・ロンド
 朝一のロープウェイでミディ、さらに乗り換えて一気にイタリア側のエルブロンネへ。
 このロープウェイは一度は乗るべき。ミディまででは景色は限定されるが、晴れた日にこのエルブロンネまで行けばモンブランの景色は満喫できる。


 ロープウェイを降り、まずは氷河をトラバースしてツール・ロンド(3,792m)の取付きへ。
 我々はノーマル・ルートの南東稜を行くが、かつて村山先輩らはもっと難しい北壁を登ったそうだ。改めて尊敬します!



で、ここツール・ロンドもこのところの陽気で例年に較べて雪は少なく、ほとんどが岩のピッチ。
 どちらかというと岩が得意な自分がリードを担当する。途中危なっかしいピッチもあるが、本場アルプスの岩を登っている幸せを実感する。

 しかし、ここでも時間がかかり、先行パーティーとはどんどん差が開いてしまう。
 クライミングの技術的にはそう差は無いと思うが、とにかく外国人パーティーは一々確保をせず、コンテでガンガン進んでしまう。
 相手をよほど信用しているのか、そうでなければもし相手が右に落ちたら自分は左に落ちればどこかの岩にロープが引っ掛かって助かる、そんな感覚である。


 
 上部で少し雪稜が出てきて、最後にまた岩登り。
 プランと同じパターンだが、こちらの方がコンパクトでやや簡単である。

 ようやく着いた頂上ではマリア像が迎えてくれた。
 ヨーロッパ・アルプスでは頂上にマリア像や十字架が建っていることが多い。背後のモンブランをバックに「アヴェ・マリア」を歌い、手を合わせる。



 下降はまた一苦労。
 先行パーティーに倣って往路のリッジからはずれて、イタリア側のけっこう下のガレをトラバース気味に行く。
 ある程度進んだところでリッジに戻り、今度はフランス側へ:懸垂下降。
 途中、ルートファインディングに迷ったり、ロープ回収で引っ掛かったりでどんどん時間は過ぎていく。
 最後はファイト一発、クレバスを飛び降りで越え、氷河に降り立つ。

 ついに膝が痛み出した私は、最後は相方にロープで引っ張られるようにしてトリノ小屋到着。
 遅い夕食後、死んだように眠る。


8/12(水)晴れ
バレ・ブランシュ横断~コスミック稜
 この日はシャモニーで一番美しい雪稜と呼ばれるロシュフォール山稜へ行く予定だったが、昨日の疲れ、膝の不調、そしてこの好天続きで肝心の雪稜がほとんど岩稜と化しているということで気持ちが折れてしまった。
 というわけで、おとなしくミディへ帰る。
 ただロープウェイで帰るのでは消化不良なので(私はそれでも良かったが)、バレ・ブランシュ(白い谷)を横断して行くことに。


  モンブランやタキュルの荒々しい東面、そしてグラン・カピュサンなど憧れの景色を間近に見れる素晴らしいコースだが、それよりも私は膝が痛くてキツかった。
 ミディへの最後の登りが近づいた時、突然相方が「今からコスミック稜へどうだろう?」と言い出す。
 これまでの行程で自分たちは標準タイムより時間が掛かり、何より膝が心配だったが、気持ちとしてはせっかくなので行ってみたい。
 相方は昨年ガイド山行で行っており、また昼からでも多くのパーティーが取り付いているので、少なくともルート・ファインディングは心配なさそうだ。


 

 ここもやはり雪が少なく、取付きからアイゼンを外していく。
 まず緩い岩の斜面を3ピッチ、その後、懸垂下降で3ピッチ。さらにガレっぽい岩場をトラバース、短い雪稜と続く。
 我々の前は熟年というか初老の夫婦を連れたガイド・パーティーで、スピードはかなりゆっくり。
 途中で何度か抜かそうと思ったが、結局後ろに付いていく。

 いよいよ核心のクラック。グレードは4bで高さはせいぜい5mほどだが、相方の話ではほぼ垂直で途中に支点は無く、一気に登らないといけないとのこと。
 正直、見るまでは不安で、各ガイド・パーティーの客もそれなりに苦労し、引っ張り上げてもらっていた。
 ホールドの位置と手順を確認して一気に越えたが、下から追い付いてきた地元の老ガイドが私を見て「トレビアン!と言ってたよ。」と後で相方に教えてもらった。



 さらに数ピッチの岩登り、最後はモンブランをバックにガストン・レビュファのポーズで記念写真を撮り、コスミック稜終了。
 終了点のミディ駅で大勢のギャラリーに迎えられるが、ここシャモニーではクライマーの姿など当たり前。特に北鎌のように拍手を受けることもない。
 登山ツアーでモンブランに登りに来た日本の方と話をするが、結局モンブランはグーテ側が閉鎖中(8/5だけ1日だけ開いたとか)、ミディ側も8/9の雨が山では20cmの積雪となりガイドが行くのを嫌がっているとのこと。
 結局モンブランは中止、代わりにイタリア側のグラン・パラディソ(4,061m)になって「まったく何しに来たか、わからないですよ。」と嘆いていた。



8/13(木)晴れ
ギャリオンの岩場
 マルチパスも使い果たしたので、バスで行ける近場のギャリオンへ再び。
 明後日は毎年恒例のシャモニー・ガイド祭がここで行われるということで、岩場は準備の真っ最中。
 それでも左半分は開放されていて、簡単なルートを3本ほど登る。
 隣を登っていた小学生低学年の女の子に話しかけるが、こちらの子は顔は綺麗でもニコリともしない。こちらが怪し気なおじさんだからかもしれないが、シャイというかクールというか。


 その後、ズーシュまででバスで行き、クライミング・ジムを見たかったが見つけられず。
 シャモニーへ戻り、駅裏の共同墓地まで散歩。
 有名なウィンパーやらエルゾーグ、レビュファなどの墓を訪ねる。OBの方たちはもちろん憧れの存在として知っているだろうが、今の山岳部の若手の人たちはあまりピンと来ないかもしれない。(時代を感じてしまいます。)



8/14(金)雨
 お土産の買い足し、最後は話のタネに日本料理屋「SATSUKI」で食事(高いよ!)をして、帰国の便へ。翌15日(土)夕方、成田着。




[MEMO]
 シャモニーでの二週間。本命のモンブランは逃したが、膝に爆弾を抱えたまま、ミックス3本、マルチ2本、ゲレンデでの岩登りやハイキングなど十分楽しめました。
 同時に歳によるスピードの衰え、自分ではアイスの技術と経験の必要性を感じました。
 モンブランはどうしてもという強い気持ちはないけど、登れないとやはり気になるもの。
 また機会があれば、マッターホルンとセットにして登りたいという気持ちになりました

2 件のコメント:

  1. お疲れ様でした。膝は大丈夫ですか?モンブランはお互い残念でしたが、岩を楽しめたようで良かったですね(^^)コスミック稜、私もいつか登ってみたいです。 坂本

    返信削除
  2. 膝、相変わらずダメです。歳取るとほんと治りが悪くて、若い皆さんが羨ましいです。
    私からするとタキュルもけっこう高く感じ、サクッと登られる皆さんに感心しました。
    上野(か)

    返信削除