2016年8月21日日曜日

北穂高岳・滝谷ドーム中央稜(一応、夏合宿)

「『山岳部なのに北鎌尾根登ってないの?…ふーん。』って言われたくないよな~。北鎌行くぞ!!」
・・・と張り切る部長以下若手メンズ三人衆に対し、「北鎌=遭難して死ぬ」というイメージしかない、ヘタレ部員の私。
加えて、季節は夏。もし北鎌に行ったら・・・暑くて、徒渉怖くて、尾根長くて、水重くて、「遅い!」といじられて(ウソ)、死ぬな。ぜったい死ぬ。

ヘタレとしてはそんなヤバい山ではなく、大先輩たちが登ってきた、楽でおもしろくて、かっこいいルートを登りたい(最低)。

・・・という訳で、同じ邪(よこしま)な志を持つ元山岳部長にしてベテランアルパインクライマーのOB村山さんと二人、のんびり北穂高岳は滝谷へ遊びに行ってきました。

今回は、我等が山岳部には珍しい、山小屋ステイの壁ルンルン山行です。
疲れたくないから山小屋にしたはずなのに、不思議なことにテント泊より荷物が重い。
そんな珍道中の記録です。


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【日程】8月9日(火)夜行~13日(土)
【メンバー】村山、廣井
【目標】できるだけ楽をしよう
     俺たちにだってメンツがある!

【村山御大の、「アルパイン “これだけ”は言っておく」シリーズ】
・「ハーケンの穴でA0はするなよ」
・「たとえ小石でも落石は絶対に起こすな」
・「クラックは内側に入りすぎるな」
・「一度登り始めたら、『やっぱり登れません(泣)』はできないぞ」

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《1日目》上高地~涸沢
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午前5時30分、上高地バスターミナルにて



















渋谷を22時に出発する高速夜行バス「さわやか信州号」で上高地へ。
寝ているだけで、翌早朝、上高地へ届けてくれる山屋さんの心の友。
乗った瞬間から冒険への旅が始まる夢の超特急、まさに21世紀の「999」なのである。
(案内人がメーテルじゃなくて村山さんだけど・・・)。



山の日でさぞかし混雑しているだろうと思ったら、意外に空いていてビックリ
















しかし、朝の上高地って8月なのに冷えますね。
この冷涼な空気を亜熱帯の我が家へ送風できないものだろうか。
寒い、寒い」と騒ぎながら登山計画書を提出、下山後用の温泉セットを荷物預所に預けて、いよいよお山へGO!


屏風岩



















横尾を過ぎると現れる屏風岩!
この威風堂々とした姿、いつ見ても惚れ惚れとしてしまう。
いつか登ってみたいなあ。

グダグダ歩いているうちに、涸沢に到着。
北穂まで行くつもりだったけど、ビールと枝豆とソフトクリームを見たら、そんな気分は吹っ飛んでしまった。
景色もいいし、今日は涸沢までにしよう!


前穂高岳北尾根、眺めていたらまた登りたくなってしまったー!
誰か一緒に行きませんか??
 
 
 










北鎌に行っていたら、今頃草木ボウボウの尾根を引きずり回されていたんだろうなあ
ソフトクリーム最高!わはは




 
















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《2日目》涸沢~北穂高岳
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朝3時起床。
パンとコーヒーの朝食を食べ、4時過ぎに涸沢小屋を出発。
北穂高岳山頂の山小屋、北穂高小屋を目指します。

7時には北穂に着きますね!





廣井カメラが捉えた涸沢テント村の夜景

 北穂高岳南稜は一般ルート、日の出前の涼しいうちにサクサクッと登れば7時前には頂上に着くはず。
小屋に荷物をデポして、今日中に一本は滝谷を登っちゃおう!

・・・と思っていたら、南稜を登り始めて1時間、サルの集団に取り囲まれた。大ピンチ!!
奇声を上げながら跳ね回る遠い親戚たちに、びびりまくる。もうやだ。
しばらく登るとサル山ゾーンを脱出できたものの、なんか疲れちゃったなあ~。

重い荷物でエッチラ、オッチラ。
北穂高岳って、こんなに遠かったっけ??
 
現実逃避。お花が綺麗だなあ



遠いよ~~~

そんなこんなで、北穂高岳登頂!
途中で時空間の歪みにはまりこんだのでしょうか、時計を見たらなんとビックリ、11時半!!!!!


山の日、おめでとうございます


荷物が重かった理由はコレか
(他にもいろいろ・・・)   
「今日は滝谷ムリだね~」ということになり、まだお昼前だけど、北穂高小屋のテラスで酒盛り開始。
涸沢小屋で知り合った三重のご夫婦も参加。ようこそ、北穂テラス居酒屋へ!
当店のおすすめは、生姜の砂糖漬け入りホットワインとブランデーホットミルクでございます。



あー、周囲の視線がイタイ・・・

(こいつら滝谷に行くつもりだったらしいよ)
(ウソ、この体力ゼロの飲んだくれが!?)
(こういう身の程知らずが事故起こすんだよね)

↑↑↑みんな黙ってるけど、心の声が聞こえるよー、これって被害妄想??
  とにかくイタタタタタタ・・・


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《3日目》滝谷ドーム中央稜、クライム・オン!
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朝起きたら、そこそこの強風。
でも、北穂高小屋のおいしい朝食を食べているうちに、収まった。
ラッキー!でも、敗退の言い訳がなくなっちゃった。
※今回、朝食は全日程分準備して来たのですが、「小屋の朝食>>>>>>>>>>>>>>食当の朝食」ということで、小屋に朝食をお願いすることになりました。

6時、北穂高小屋を出発
今日は本気(マジ)でがんばろう!!


クライマー村山
技術:5
経験:5
体力:1
パッション:プライスレス
クライマー廣井
技術:3
経験:1
体力:4
パッション:そこそこ
 
北穂山頂から中央稜への取付きまでは、道に迷いさえしなければ1時間もかからないくらい。非常に近い。
北穂南峰を越え最初の鎖場を下りたところから、一般縦走路を外れ、取付きへと下っていきます。
人気ルートのため、踏み跡が明瞭で迷う心配はほとんどなし。一ヶ所、間違った方向に踏み跡が分岐しておりケルンまで積んである箇所がありますが、行き先の方向をよく見て先々ルートを読んでおけば問題ありません。落石注意。

取付きへの下りの最後は、懸垂下降。
支点はペツルのボルトがガッチリ埋め込まれており、安心
滝谷出合を眼下に眺めながらの、スッキリした下降を楽しめます。


オンサイトなど微塵も狙っていないので
先行パーティの登攀をしっかり観察



本日の課題、「滝谷ドーム中央稜」に到着!
人気ルートのため、混んでいます。

登り始めるまでに2時間待ち、この日は私たちの知っているだけで7パーティが登っていました。


中央稜は比較的岩が安定しているものの、クラックの中やテラスの上はもちろん、ルート上にもちょこちょこ浮石や中が空洞になっている気配の岩がありました。
クライミング中、ホールドが浮いていないか必ず確認してから体重をかける、支点をセットする、重要ですね。











計画段階からビビりモード・スイッチが入っており、「無理ならリードは俺がやるから」という村山さんのお言葉に甘えてついてきたのですが・・・実際の壁を見て「これは登れる」と確信。
村山さんにリードを譲っていただき、クライム・オン!



先行パーティのリードの方は、フリーのグレード5.12dだって!!
それを聞いて「いけるいける♪」からの急速なトーンダウン・・・だいじょうぶかな???


1ピッチ目、上部のチムニーが核心
クラックの奥に入りすぎると岩に挟まって身動きが取れなくなる

自分は小柄なので苦労なく登れました。











2ピッチ目、フェース登り。 右奥の壁(4ピッチ目)に取付いているクライマーが小さく見える
スタート(1ピッチ目終了点)は、狭くて穴の開いたテラス(チョックストーンと壁の隙間)がビレイポイント。とにかく狭い。
クライミングは、下部は簡単。上部のやや細かめなフェースの途中に一ヶ所、A0用のお助けロープ(手首に引っ掛けてバランスを取ったり引き上げたりできる)が掛かっているので安心です。



3ピッチ目、ルートファインディング中の村山御大
右奥の壁(4ピッチ目)に取付いているクライマーが小さく見える




















ロープがジグザグ、残念なことになっている


4ピッチ目、クライミング自体は難しくないけれど、ルート通り(と思った方向)に支点のピンを拾って行ったら、ロープがジグザグになってしまった。さらに、クラックにロープが挟まったりして引き上げが重いのなんの・・・。
わざわざクライムダウンして支点を間引いたのに・・・。
 

登っていったら、変な終了点に着いた(写真の左上方、四角い岩の左あたりか、ビレイ支点はややボロ目だけどちゃんとある)。
右に直上が正解だったのかも。


4ピッチ目の偽(?)終了点から
間違えて難しい方に来ちゃったよー。
A0で脱出を試みている間に、後ろのパーティに追いつかれました。
4ピッチ目の本当の終了点、最終ピッチ取付きで大休止
靴を脱いで、おやつを食べながら日向ぼっこ。




偽(?)終了点と本物の終了点とは、10メートルも離れていない程度の距離。
ほんと、ひどい目に遭いました。










5ピッチ目(最終ピッチ)は最後の1mほど、ハーケン連打のフェースが核心。
たかだか1m程度のところに、ハーケンが5枚も連打されている。
これは「A0をしなさい」という指示だろう、という都合のいい解釈で、遠慮なくA0。
いいんだ、なんだって。登れれば。

A0で格闘中、先行パーティの某山岳会のおじさんから「ここで落ちたら200mは落ちるからね~はっはっは」というありがたいコメントが。その情報、今この状況で必要ですか~!!!?
めちゃくちゃ強い山岳会の皆様で、涸沢にテントを張って連日滝谷まで往復しているとか。
レ、レベルが違いすぎて、なんだかもう理解不能・・・恐縮です。
色々アドバイスもくれて、とっても親切な方でした。


かなり有頂天になっています

午後2時、滝谷ドーム中央稜登頂
やったね!


ドームの頭(終了点)から縦走路へ戻る道は、初めての人にはややわかりにくいので注意が必要。
簡単にクライムダウンできるのですが、上から見ると一見、スパッと切れていて下りられないように見えるのです。
ちょっと迷ってしまった。




その日のうちに涸沢に下りようかと思ったけれど、面倒くさくなったし北穂高小屋のご飯はおいしいので、やめたやめた。
小屋に帰って、テラス居酒屋でお酒飲んで、夕ご飯までお昼寝。


「クライマー、壁を下りたら、ダメ人間」(字余り)

北穂高小屋の連泊者用特別メニュー
ウマー!

















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《4日目》帰宅
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たぶん、誰も興味ないのでササッと報告。

今日も大人気の滝谷ドーム中央稜




小屋の朝ご飯は、目玉焼き
村山さんは醤油派
廣井は塩派

・・・どうでもいいか。



帰りがけに横尾付近にて、その昔、屏風岩を登るクライマーが拠点にしていたという岩小屋跡を見学。掃除すれば使えそう。

涸沢テント村が拡大していました
持ってきたフリーズドライのカレーを調理
涸沢でゆっくりランチ





一度乗ってみたかった、松本電鉄上高地線で帰宅。
朝7時くらいに北穂を出たのに、なぜか終電。

まあ、そんな日もあるさ。
とにかく、楽しかったのでよかった!!!







【総評】
北穂高岳南稜は体力登山!?

【お礼】
山岳部先輩の皆様、いつもクライミングをご指導いただきありがとうございます。
村山さん、滝谷に連れて行ってくださりありがとうございました。
改善点は多々あるものの、アルパインデビューに加え、初めてオールトップで登り切ることができました。
またご指導よろしくお願いします!

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